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作品展・展覧会のご紹介

布による表現 元『具体』メンバーの現在(いま)

『布による表現 元『具体』メンバーの現在(いま)』
10/18(金)〜11/17(日)


【布による表現 元『具体』メンバーの現在(いま)】
 今年の2月から5月にかけて、ニューヨークのグッゲンハイム美術館で「具体」の回顧展が開催された。
 あらためて説明する必要もないが、「具体」とは、1954(昭和29)年に芦屋市在住の吉原治良が結成した前衛美術集団、具体美術協会のことである。当時、吉原は49歳、メンバーは20歳代から30歳代の若い美術家が中心だった。

 「具体」が目指したのは“未知の美”の探求であった。精神を揺さぶられるような真に芸術的な感動、芸術的な体験は、それまで誰もみたことがない作品との出会いからこそ生まれる。そしてそれは、直感的、感覚的に観る人の感性に訴えかけるものでなければならない。この吉原の独特の芸術館から、「具体」は現実に存在する物の姿を介して表現するのではなく、色や形、素材の物質感そのもので表現することと、オリジナルな、世界にひとつしかない方法で表現することにこだわった。
 戦前から裕福な大阪商人たちの郊外住宅地、芦屋に住み、欧米の最新の文化に触れてきた吉原は、芦屋人・関西人・日本人という枠を超え、国際人(コスモポリタン)の感性を持った稀有な美術家だった。だからこそ、芸術的な感動、体験とは人類共通の普遍的なものであり、「具体」の作品は、日本人だけでなく世界中の人たちをも感動させることができると確信していた。当時、まだ世界を知らなかった日本人の多くは、彼の芸術観が理解できなかったが、「具体」の作品は、コスモポリタンとして一歩先んじていた欧米の美術家、美術関係者を驚嘆させる。そして、交通網や情報網の発達で脱境界が進んだいま、グッゲンハイム美術館で世界中から集まった20万人以上の人々に、共感をもって受け止められた。
 「具体」は吉原の死により1972(昭和47)年に解散したが、その芸術観は、元メンバーに引き継がれ、生き続けてきた。今回の展覧会では、現在も国内外で旺盛な活動を行う今井祝雄、堀尾貞治、前川強が、「具体」時代から用いてきた布を素材に、三者三様の表現を展開する。素材を共通にすることで、それぞれの独自性をよりいっそう際立たせようという、ユニークな企画だ。それは吉原のホームタウンであり「具体」の聖地ともいえる芦屋で、彼らが掲げた芸術の本質と理想が、いまもなお古びることなく輝きをはなっていることを示す場にもなることだろう。

文:平井 章一 京都国立近代美術館 主任研究員

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